質問した人:参議院議員 高嶋良充 たかしま よしみつ
民主党 比例代表選出 当選1回(平10)
≪プロフィール≫
1941年大阪生まれ
職歴
1959年
枚方市職員、枚方市労連、自治労大阪府本部役員を経て、自治労中央書記長、政府生活環境審議会委員、1998年
参議院議員に当選
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○高嶋良充君 消防は常に災害発生に備えて二十四時間の拘束勤務体制が取られているというふうに思うんですけれども、二十四時間拘束をしていても勤務時間として算定しているのは大体通常十六時間だというふうに聞いております。
じゃ、後の八時間、無賃金の拘束時間が存在するわけですけれども、消防庁はこの時間帯をどのように認識されているんでしょうか
○政府参考人(石井隆一君) 消防職員の大半は、御承知かと思いますけれども、二部制あるいは三部制の交代制勤務に従事していただいているわけですけれども、いずれも労働基準法に定めますとおり、一週間当たり四十時間以内の労働時間になるように勤務を割り振っております。具体的に申しますと、二部制あるいは三部制のいずれも、一回の当直二十四時間につきまして、勤務時間として十六時間を割り振り、残りの八時間については休憩時間としている消防本部が多いと承知をいたしております。この八時間についての御意見ではないかと思いますが、この八時間の休憩時間につきましては、食事ですとか睡眠、リフレッシュ運動など、自由な時間として使用することができるというふうになっております。
なお、勤務の、消防職員の特性で、休憩時間中に予測できない災害の発生などによって即時に対応するという場合があるわけですが、そういった場合には時間外勤務手当の支給でありますとか、あるいはあらかじめ定めて勤務時間の変更などを行うといったような措置が講じられておりますので、委員御指摘のように、賃金を払わないで勤務されているというふうな時間ではないというふうに考えておる次第であります
○高嶋良充君 八時間は休憩時間だと、こういう御答弁でございました。仮眠をしながら休憩すると、こういうことだろうというふうに思うんですが、そこで厚生労働省に伺います。
昨年二月の二十八日に、大星ビル管理事件に関して最高裁判決が出ました。その判決の内容は、仮眠時間中も会社の指揮命令下にあり、労働から解放がなければ労働時間とされると、画期的な判決が確定をしたわけですけれども、厚生労働省としてはこの判決をどのように受け止められて、類似職場へどのような指導をされているのか、お尋ねしたい。
○政府参考人(青木豊君) 厚生労働省といたしましては、労働時間、休憩時間の関係でございますが、労働時間とは一般的に従来から使用者の明示又は黙示の指揮監督の下にある時間を言うということで、必ずしも現実に精神あるいは肉体を活動させることを要件としないというふうに考えているところでございます。今、お挙げになりました最高裁判決につきましては、今申し上げました従来からの厚生労働省の考え方と同種であるというふうに考えております。
労働時間に該当するかどうかという基本的な考え方は今申し上げたとおりでございますけれども、個別の案件につきましては個々具体的に判断しなければならないというふうに考えておりまして、労働基準法に照らしまして問題が認められる場合には引き続き使用者に対しまして適切に指導していきたいというふうに考えております。
○高嶋良充君 個々具体的な例で判断をすると、こういう御答弁でございますが、まず、じゃ先に消防庁に聞きましょうか。
消防職場においても、先ほどの最高裁判決と全く同じとは言いませんけれども、よく似た対応になっていると。それは仮眠中でも警報や電話により出動が義務付けられているわけですね。これを判決で示されたと同様の勤務状況だというふうに私は解釈をしているわけですし、その出動実態というのは先ほどの最高裁判例の実態よりも圧倒的に消防の方が多いというふうに聞いているわけですけれども、消防庁としてはこの最高裁判決との関係でどのような見解を持っておられるんでしょうか。
○政府参考人(石井隆一君) 委員もよく御承知かと思いますけれども、公務員は公務のために臨時に必要がある場合の時間外労働につきましては、労働基準法に特例が設けられております。消防職員の交代制勤務では、常時消防本部に一一九番通報の受信を、そのこと自体を職務とする指令係員が配置されておりまして、休憩時間中の職員は指令係員等からの命令を受けて出動するということになるわけでございます。
最高裁判決の事案は、この判決拝見しますと、こうした特例が適用、特例が規定されていない民間企業の場合でございますし、かつ、上告人らは仮眠時間中、警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられていると、いたということ、それが理由になって労働基準法上の労働時間と判示されたというふうに考えております。
したがいまして、消防職員の勤務の場合とは率直に申しまして違うのではないかと。したがいまして、この最高裁判決は消防職員の問題に直接関係するものではないんじゃないかというふうに理解をしているわけでございます。
○高嶋良充君 消防庁の見解をお聞きをしていると、一つは、労働基準法の適用の問題が言われています。私は、これは地公法の適用者でもあるわけですから、労働基準法の適用を当然受けるし、臨時の公務の場合という三十三条の三項でしたかね、この部分の適用は当然入っているわけですけれども、だからといって、それによってその部分が解除されるということではないということだと思うんです。
もう一つは、仮眠時間中の警報とか電話の応対の関係については、その人本人がやるんではなしに別の職員がいるんだから、こういう実態が違うんだと、こういうことのようであります。
そこで、最高裁判決をよく読んでみると、趣旨は、判例の基本的な趣旨はこういうことなんですね。仮眠時間中も労働からの解放の保障がなければ、それは指揮命令下の時間であると判断されると、こういうことを言っているわけですから、指令係員から指示される場合であろうと、先ほどの大星ビルの人にように直接警報を感知する場合であろうと、それは関係ないはずだというふうに法学者は言っています。いずれにしても、労働からの解放の保障があるかどうかの判断は、仮眠中は仕事がないことがほぼ確実だから安心して眠っていられるかどうかの問題だと、こういう指摘があるわけであります。
そういう観点でいうと、消防職員は、仮眠室での待機と、指令係員からの業務命令に応じて直ちに相当の対応を義務付けられている、そういうことであるわけですから、当然のこととして、最高裁判決からもこの仮眠時間帯というのは労働時間になるのではないか、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか、再度お答えください。
○政府参考人(石井隆一君) 委員もよくごらんいただいていると思うんですが、この最高裁の判決文を拝見しますと、本件仮眠時間中、仮眠室における待機と、警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられているのでありというふうに書いて、以下続いてあるわけですが、私どもは、先ほども申し上げましたように、やはりこういった外部からの緊急の事態を告げる情報については、それを受けることを職務とする指令係員が別途あらかじめ用意されているわけでありますので、今回、今、先生が引いていらっしゃる最高裁判決の場合とはやはり違うのではないかというふうに考えている次第であります。
○高嶋良充君 それは長官、余り内容を理解をされない、詭弁だと言えばちょっと言い過ぎになるかも分かりませんけれども、判例からいうと、その内容についての理解が不足をされているのではないかなというふうに思うんです。
要は、仮眠時間帯に指令係員からの連絡がどの程度あるかどうかという、そこの問題だろうというふうに思うんです。法律専門家に言わせると、それが月一回しかないというのであれば、これは当然のこととして安心して寝られる時間だと。しかし、一日一回そういうことが起こるとか、一週間に何回も起こる、こういうことであれば、これはやっぱりその頻度からいっても仮眠時間イコール労働時間という最高裁判例が適用されるんではないかという、そういうことも言われているわけであります。
そこで厚生労働省に伺います。
先ほどいろんな、類似というか、例による、こういうふうに言っておられました。私が知り得ている消防職場の仮眠休憩の実態を若干申し上げますので、それに基づいて御判断をいただきたいというふうに思いますが。
作業服を着て仮眠している場合、それから、そういうところは非常に多いんですけれども、そういう部分や都市部を中心にした救急部門では、頻繁に、仮眠をしていても出動の号令が掛かる。こういう場合はほとんど通常の勤務状態とは変わらない状況だというふうに思うんですけれども、このような実態では労働時間というふうにみなすべきだと思いますが、いかがでしょう。
○政府参考人(青木豊君) 先ほど申し上げましたように、労働時間は一般的に、一般論として申し上げれば、使用者の明示又は黙示の指揮監督の下にある時間ということでありますので、あとは、委員がお挙げになりましたように、個々具体的な事案の判断ということになるかと思いますが、それはなかなか、実態を十分に見て、実態に即して個別に判断する必要があると考えておりまして、例えば、作業服を着ただけで駄目なのかどうなのかということは直ちにはなかなかお答えにくい、それだけでどうだという判断はなかなかしづらいところでございます
○高嶋良充君 まあ、幾らやっても堂々巡りのようでありますけれども、いずれにしても、労働法学者から見ても、二十四時間勤務、それも仮眠中の実働時間の在り方の問題についての、最高裁判例としてもう既に確定をしたわけですから、この辺についてはこれから更に議論させていただきたいというふうに思っております。
そこで、片山大臣にお願いがあるんですけれども、この今回の最高裁判決、今申し上げましたように、消防職員の勤務条件にも大きな影響を与えるというふうに思っていますし、現行の消防の勤務条件等から見ても、労働法学者の間でも疑義を呈しておられる方が非常に多いわけであります。いつまでも現場の消防職員の献身的な努力、すなわち、出動の状況にあっても仮眠だということで無賃金で働くというような、そういう献身的な努力に依存するのではなくして、やっぱり労働基準法を遵守できるような、そういう職場に改革をしていかなければならないというふうに思うんですが、そのためにはまず、先ほどからも言っていますように、仮眠勤務実態を早急に、どのような状況になっておるのかということを調査をしていただいて、その調査に基づいて、何らかの改善策が必要であれば改善策の検討を行っていただくと。そういうことで、まず実態調査を行っていただけないか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(片山虎之助君) 私は余り詳しくないんですが、それを今聞いておりまして、やっぱり専門の係員がおって、指示して出ていけと言った場合には行くわけですね。指示があるまではもう寝ておられるわけですよ、消防職員の方は。ただ、民間の場合には、本人に来るかもしれぬから、おちおち寝ておれませんわ、寝ていても。そこはやっぱり違うんですね、最高裁判決で。専門の受付がおって、何かあったときには寝ている仮眠の職員に行けと言う場合と、それがいなくて自分が受けてという場合とは、寝ている条件がかなり違いますね。
それからもう一つは、労働基準法で除外の規定があるから、そういうことで長官がそういう答弁をしていると思いますけれども、今、勤務実態がどうなっているのかといったら、一応の調査は毎年、勤務時間調査というのはやっているようですが、少し、もう少し丁寧にその辺は調査して、今、委員の言われるお気持ちも分からないわけでもありませんので、少し検討いたしてみます。
○高嶋良充君 勤務時間帯の調査というのは消防庁でやられると思うんですが、じゃどういう勤務実態なのかということについては調査をされておりませんので、是非、大臣の方で、先ほど御答弁をいただきました、早急に実態調査をお願いをしたいというふうに思います。
そこで、もう一点お尋ねします。
厚生労働省に伺いますけれども、この仮眠休憩中に、じゃ、指令係員から実際に出動だと、こういう指令が下って実作業に就いた場合には当然、時間外手当が支給されて当然だというふうに思うんですけれども、これを時間外手当を払わないで休憩時間を後日割り振りをやり替えると、こういう方法が取られておればこれは労基法に照らしても違法になるんではないかと思いますが、その辺はどうでしょう。
○政府参考人(青木豊君) 時間外労働の件でございますけれども、これは今、委員おっしゃいました時間外、労働基準法三十二条で定める法定労働時間を超えて働かせたという場合には割増し賃金を支払えと、こういうことになっているわけであります。ということでありますので、その時間を超えたかどうかということでその義務が生ずるということであります。
○高嶋良充君 当然、仮眠時間中であっても仕事に就けばその時間帯を超えると、こういうことですから超過勤務手当の対象になると思うんですが、消防庁はこういうケースについてどのような指導をされていますか。
○政府参考人(石井隆一君) 今お話に出ましたように、消防業務の特殊性から、休憩時間であっても災害出動が必要な場合が出てくるわけですけれども、こういった場合は原則時間外手当を支給することで対応をしていただいていると聞いております。
また、災害出動による勤務を命じて、その後の勤務時間において休憩時間を振り替えるというふうな措置を取っている消防本部もあると承知しておりまして、こうした場合には、あらかじめ労働時間数は変更しない、それから休憩時間の振替をあらかじめ決めている、定めているというようなことであれば振替自体には問題がないんじゃないかというふうに従来から解されているというふうに承知をしているところであります。
いずれにいたしましても、この休憩時間中にできるだけ消防職員の皆さんに心身リフレッシュしていただくことが必要でありますので、私どもとしては、今言ったようなことはもちろんですけれども、入浴施設でありますとか、仮眠室の改善ですとか、できるだけ消防士の皆さんの労働環境が良くなるような整備を各消防本部と連携しながらしっかり対応していきたいというふうに考えている次第でございます。
○高嶋良充君 最後に要望申し上げておきますが、いずれにしても、後日に振り替えるというのは基本的にはやっぱり問題があると思うんですね。そこの割り振りの関係については基本的にはやらないという、そういう原則論を明確にしていただいてやっていただきたいと。
消防庁も全国の消防長会議のときに、勤務時間外の、業務命令による休憩時間の災害出動については勤務時間外の勤務であるので、それによる処理も超過勤務手当の支給等によって適正に処理されなければならないと、こういうことを明快に言っておられるわけですから、ただ消防庁が言われているようなことになっていない消防本部があるというふうに聞いていますから、この辺もきちっと先ほどの調査と一緒に実態調査をしていただいて、改善できるものは速やかに改善をしていただくということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。 |
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