最高裁判決
〈仮眠時間は労働時間!〉
を実現しよう!
過去の仮眠時間分の支払いで妥結、当直手当は暫定的に1000円増
労働組合による1年半の交渉の成果
もう受け取られたと思いますが、泊まり勤務で設備管理を行なっていた方に、未払いになっていた仮眠時間分の賃金の一部が
支払われました。また、11月16日以降の泊まり勤務には手当1000円が増額されます。
会社が清算金受け取りの条件として組合員以外の社員に署名を求めた文書にはこの間の経過は一切ふれられていませんが、今回の措置は昨年6月以来労働組合(すみだユニオン:T分会)が会社と続けてきた交渉によってようやく実現したものです。
昨年11月に未払い賃金の支払い要求を出してからも1年になります。
(経過、および、別紙「確認書」をご覧下さい)
しかし、問題は本質的には、全く解決していません。なぜなら客先からは仮眠時間分の契約金額をまだ頂けないというのが現状だからです。最高裁判決は、ビルメン労働者に限らず、介護、消防などの職種にも該当し、社会的に非常に大きな影響を持つはずの内容でしたが、実際には多くの現場で未だに無視されているのです。これは一つ「T社」だけの問題ではありません。社会的な運動がどうしても必要です。最高裁判決を現実化し、ビルメン労働者の地位確立のために、あらためて皆さんの「ユニオン」への結集を呼びかけます。
大星ビル管理労組の14年に亘る裁判闘争の成果で、ビル設備管理労働者の仮眠時間も、故障時の対応等が義務づけられていれば労働時間である、という判決です。
最近では、作業着への更衣時間や点呼時間についても勤務時間であると認める判決が定着しました。
このように、これまでずっと争われてきた「労働時間とは何か」という問題は、使用者側の指揮命令下にあれば労働時間である、という見方に決着したのです。
この判決を廻るビルメン業界での問題は、客先に納得してもらって委託金額を上げて頂かなくてはならないのに、入札制度の中で、自分の会社だけがそれを言い出せない、というジレンマにあります。結局、「法」はあっても実現されず、ビルオーナーは少しでも低価格の設備管理費を求め、低価格を求められたビルメンの経営者は「職場が無くなっては元も子もない」という殺し文句でビルメン労働者に低賃金を迫ります。結局最後のビルメン労働者だけがしわ寄せを受けているのです。
このような、それぞれの会社が横にらみで身動き取れない状態を打破するために、組合側では連合(日本労働組合総連合会)ビルメンテナンス連絡会が厚生労働大臣に行政指導を求める要請書を提出したり、経営者側でも大阪の警備業協会が大阪府との交渉で仮眠時間が労働時間であることを認めさせるなどの動きが出ています。消防士の仮眠時間については今年4月参議院総務委員会での質疑もありました。しかし、実効性のある動きはまだ無いのです。
分会は一貫して、仮眠時間分の委託料を客先との契約で勝ちとること、を最終的な目標にしてきました。そのためには経営側の尻をたたかなくてはならず、必要なら行政に訴えることも必要だと考えてきました。「尻をたたく」ために2002年11月には、過去の仮眠時間分の未払い賃金の支払い請求を提出しました。客先との契約交渉のためには、参考資料として職場の作業実態や、判決文等も会社に提供し、きちんと契約交渉をするように後押ししてきたのです。残念ながら、今年度の契約には反映されませんでした。このような、客先から仮眠時間分の委託金額をもらえていない状況では(たとえ会社側に詳細な経営指標を明らかにしないという不誠実さがあるのだとしても)、単に会社からの仮眠時間分の全額支払いにこだわり、裁判等の強硬措置に移行することは、客先に最高裁判決に沿った委託契約をしてもらうという目標からは効果的ではないと考えてきました。分会は、あくまでもビルメン業界総体が客先から仮眠時間分の委託料を確保できることをめざし、企業の枠を超えてあらゆる行動をしていくことにしています。
そのため、会社側には、客先に理論立てて最高裁判例を説明し、ビルオーナー企業のコンプライアンス(遵法精神)の立場から対応して頂けるような契約交渉を行い、決して下請け根性での対応をしないよう迫っています。オーナー側を説得できなければ結局は現場労働者にだけ負担がかかるのですから、そのようなビルメン企業の経営者は自らの職責を果してはいない、といわざるを得ないのです。
今年(2003年)8月、南部興業という全国展開していた中堅のビルメン会社が倒産しました。都庁の清掃や国の施設の管理なども受託していた会社だったのですが、ダンピングで入札に応じ続け倒産に至りました。そこで働いていた労働者が今私たちのユニオンに加盟して未払い賃金を少しでも多く確保しようとがんばっています。都庁の清掃では、この会社はそれまでの価格の3分の1で応札し仕事を取っていました。人件費が大きな要素である清掃の仕事で価格が3分の1ということは人件費にしわ寄せが行っているということです。しかし、価格のみを判断基準とする入札制度では、このような会社とそれによる労働者の犠牲を排除できません。安ければいい、入札したら後はその会社の責任だ、自治体は知ったことではない・・・、税金を投入する仕事がそのようなことでよいのでしょうか。今、地方自治法の改正により、価格以外の要素も含んだ総合評価での入札制度も可能になっています。また、いままで公共工事にしか適用されなかった入札の最低制限価格をこうしたサービスの入札に設けることも可能になっています。各地でそうした制度の導入を求める運動が起きています。私たちはT社という枠の中だけでなく、そのような運動の一員として行動していきます。
会社は今回の交渉過程で、組合との妥結内容を組合未加入の泊まり勤務者にも適用することを明らかにし、それに従って、組合員と同じ支払いと手当の増額が社内の対象者全員に適用されることになりました。
しかし、今回の交渉では、泊まり勤務のある現場の内、A職場の設備にしか組合員がいなかったために、他の職場の実態を反映させることができませんでした。A職場に関しては、22時以降24時までの常態化した勤務への支払いを(過去分のみの一部ですが)加算させました。どのような権利も自ら声を上げなければ実現できません。
「仮眠時間も労働時間である」という、先行したビルメン労働者が勝ちとってくれた判例を実現するために、皆さんがぜひ私たちのユニオンに加わり、闘うことを訴えます。
また、この間の経過を理解して、今回の清算金の中からぜひユニオンへのカンパもお考え下さい。
すみだユニオンT分会は、すみだユニオンという一人でも加入できる地域ユニオンの一部です。すみだユニオンは江戸川ユニオン、ふれあい江東ユニオンと共に、通称「下町ユニオン」という協議体を構成しています。そこには、ビルメン労働者はもちろん、中小零細企業で働く人、介護労働者、パート、外国人労働者、理不尽な解雇に闘っている人など、企業、性別、年齢、国籍を超えた労働者が加わっています。また、運動を支援する自治体労働者なども組合員として参加しています。もちろん「下町」以外に在住する者も多数です。企業が違っても同じ組合員ですから、別のビルメン会社の団交に出席することも行っています。
さらに下町ユニオンは各地の地域ユニオンで構成する「首都圏ネットワーク」、「全国ネットワーク」に加わっています。またいくつかのユニオンは「全国ユニオン」として連合(日本労働組合総連合会)にも加わっています。
2002.2.28
最高裁判決
「指揮命令下にあれば仮眠時間も労働時間!」
2002.5月
客先A社の設備管理職場から「すみだユニオンT分会」に集団加盟
2002.6.28
仮眠時間問題で最初の要求書提出
「A社設備管理職場の就業時間および休憩時間を明らかにすること」
2002.7.11
会社側文書回答
「宿直勤務の見直しを実施しております。現在新しいシフト体制を組み、その運用をお願いしている所であります。」
提案されたシフト体制とは、日勤者が帰った17:30から翌朝6:30までは2人の当直が交替で休憩時間や仮眠時間を取り、常に1人勤務になるというもので、「トラブルなどの場合は1人で対応し仮眠者を起こさないようにする」などという、あまりに非常識で現場実態とずれたもので、そもそも業務委託契約仕様書(仮眠22:00〜5:30……実際は24時頃までは仮眠には入れず)からも外れたものであったために、現場からは猛反発。
会社がこのようなとんでもない提案をしてしまったのは、「完全に勤務から解放されていれば仮眠時間は労働時間ではない」という警備員に対する判決もあったのでそれに合わせたいと考えたためのようです。しかし本社が契約仕様も現場の労働実態も確実に把握していなかったために、(仮眠室にはもちろん故障警報ブザーが設置されているし、冷凍機の故障をはじめとして故障対応には現場と中央制御室間でのやりとり…2人…が必要)、検討もせず本当に提案してしまったのだと思われます。
2002.7.17
本社の担当取締役からシフト体制どおりやるように再び指示、しかし作業が回らなくなるので拒否。
2002.7.18
前夜当直をした組合員が当直作業の実態を1分刻みで克明に記録したものを所長に提出。
2002.7.19
提案された「シフト体制」の問題点(就業規則21条2項…深夜4時間以上の仮眠確保…違反、作業実態との乖離)を指摘した書面を所長に手交して説明、撤回を求める。「本社には伝える」と所長。
2002.7.23
組合から再要求書提出。設備担当取締役参加の団交を求めるが団交日程が会社都合で決まらず。
2002.7.31
本社が、「新シフトは賃金支払い上のもので、実際には今までどおりの勤務で結構、シフトにより発生する深夜時間帯(22:00〜5:00)勤務3.5時間の深夜加給25%(労基法37条)を支払う」、と言って来たがどうか、と現場責任者から問いかけ。就業規則違反問題や作業実態との乖離に答えておらず、2重帳簿では必ず後で問題になるので反対。現場ではなく、組合との交渉で話し合うよう主張。
2002.8.7
本社設備担当取締役来館、7.31の深夜加給支払い案は対象者が全社的なのでただちには支払えない、と言って帰る。これで新シフト問題は消滅。(これはいったい何の騒ぎだったのか!?)
2002.8.12
組合から抗議書
「貴社の都合で団交日時が8.21まで延びることを余儀なくされ」たのに、「団交が延期されているこの間において」「組合要求・団交議題となっているA社設備管理職場の勤務体制の問題について現場に様々な案を提示し、見直し案に基づく運用を求め、または意見を求め、もしくは了解を求める行為を繰り返し行って」いるのは「支配加入、不誠実団交の不当労働行為と言わざるをえ」ない。
2002.8.21
第28回団交
本社が客先A社の設備管理職場の勤務実態を熟知していないことがはっきりする。
「会社提案を見直し、まず現状を把握する。」
2002.9月
本社から泊まり勤務の実態確認に来館、一緒に泊まる
18:00〜7:00。
その後も計3回来館。
2002.10.25
最高裁判決を勝ちとった大星ビル管理労組を訪問、お話を聞かせてもらい、資料を頂く。
2002.11.13
第30回団交
2000年10月から2002年9月までの当直勤務における仮眠時間分の未払い賃金一人平均158万円の支払いを要求。「あくまでも客先からきちんとした契約を頂くことが最終目標だが、この間の会社の不誠実な態度を正し、客先との真剣な交渉を求めるために、あえて未払い賃金の請求をする」。会社側は「対応は組合員だけでなく全対象者を同一にする」「T社だけ先行するわけに行かないのでビルメン協会や弁護士とも相談していく」等と述べた。
2002.12.7
土曜日勤務中、突然来訪した本社社員が、当日勤務者に対して、会社をつぶすようなことは止めてくれ等と言いながら、組合へ加入しないように、もしくは組合脱退を勧める不当労働行為を行なう。
2002.12.10
不当労働行為の件、緊急抗議。会社側は「監督不行き届き、二度とさせない、管理職にはそのことを徹底する」と述べた。組合としては、謝罪文等を取らず、あえて口頭でのやりとりに留めた。
2002.12月
客先との契約交渉を組合としても後押しすべく、A社設備職場の作業実態等、各種資料、を会社側に提出
2003.4月
結局、今年度の客先との契約には仮眠時間分は反映されず。
2003.4.24
大星ビル管理労組より最新動向など資料を頂く。
2003.6.17
第35回団交
会社:過去分について会社として支払う義務があると考えている。原資、客先との契約など考えると会社として方針を出し切れていない。ビルメン協会や他社の方向も探っているがつかみきれない。
いずれにせよ過去分について今あの請求金額分を皆に支払うとすればやっていけない。たとえば、金額は少ないかもしれないが、一時金で整理するということも考えられないか。
組合:会社の経理情報も明らかにしないくせに「会社はやっていけない」などというのは受け入れがたい。しかし、あくまでも、将来の客先との契約において仮眠時間分も含んだ金額を確保し、それを働いている人に支払うようにさせるというのが組合の目標だ。そのような前提の中であるなら、期日を決めて精算する方向で協議することはできるだろう。
会社:今年の契約では、仮眠時間分をもらえなかったが、夜間の勤務態勢を考えることで今後の泊まり勤務に幾分か可能な支払いができるのではないか。
組合:昨年7月会社から出されて、結局金がないということで消滅した案は現場からは総反発を食らったはずだ。
まず、A社設備職場の勤務実態、客先との関係などを、よく知って欲しい。
会社:早急に担当者を現場に行かせる。
2003.6月.7月
2回ほど本社から現場に来て話をしたが、結局前年7月の「シフト案」の蒸し返しになってしまうため、現場での話は打ち切り、団交の場に戻すよう主張。
2003.9.16
会社総務部との「事務折衝」
過去の未払い分の清算金額、今後の暫定的な当直手当増額の具体的な金額について話し合い。
2003.10.8
会社総務部との「事務折衝」
ほぼ骨格において合意、
2003.11.4
会社総務部との「事務折衝」
金額について妥結
2003.11月
確認書文言の最終すりあわせ、調印方法すりあわせ。
2003.12.4
第36回団交
確認書調印
以上