”泊り裁判”については、2003年2月24日に、
差し戻しとなった東京高裁で和解が成立し、決着しています。

差し戻しで判断を求められたのは、当時の法律では週48時間労働だったのですが、この会社での所定労働時間はそれよりも短く、また変形労働時間制が採用されていたかどうか、によって時間外労働時間数の計算が違ってくるのでその判断と計算のやり直し、また割増し賃金の元になる「通常の賃金」に含まれる手当の範囲を再審査することでした。
和解について、日本ビル新聞(日本ビル新聞社発行、第825号、2003.3.3)は以下のように伝えています。

・・前略・・・

昨年2月の最高裁判決は、「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」と定義。指揮命令下にあるかどうかは、労働からの解放が完全に保障されているかどうかによるとし、「本件仮眠時間は(不活動仮眠時間も含め)労基法上の労働時間に当たる」と判断した。しかし、賃金の計算方法については解釈に違法があるとして2審判決を破棄、差し戻しの判決を下した。

 差し戻された東京高裁では、残業単価や時間外労働の計算に大きく影響する変形労働時間制が、当時の同社に導入されていたといえるかどうかなどについて審議が続けられていた。この日の和解では、10年以上前の同社の制度の有効性について再度裁判所の判断を受けることは、今後の労使関係や顧客との関係において適当でないと判断。会社側が原告に和解金として294万8530円を支払うことで合意に至った。この金額は1審の東京地裁判決での計算によるもの。

 和解後会見を行った原告団は、昨年2月の最高裁判決以降も同様の裁判が各地で起こされ、同様の判決が下されているにもかかわらず、▽裁判に費用がかかったので冬の一時金は支払わない▽仮眠時間に時間外勤務手当を支払う代わりに昼間の賃金水準を下げる▽仮眠時間が労働時間でも管理契約金の上乗せはしない(ビルオーナー)−などの事例がみられ、「反響は大きかったが(判決の趣旨は)定着していない」と指摘。関係業界・企業に最高裁判決や今回の和解に沿った処遇改善(仮眠時間への対価の支払い、泊まり勤務の削減・廃止)を要求するとともに、厚生労働省をはじめとする行政機関に仮眠時間も労働時間であること明確にするよう対応を求めていくとしている。

 〔合意書〕

 いわゆる「泊まり裁判」は、変形労働時間制のもとで「仮眠時間」が労働基準法上の「労働時間」に当たるかどうかを争点として争われていたものであるところ、この点については平成14年2月28日に最高裁判所により判断が示された。

 当事者双方は、本件が昭和63年2月から7月までの賃金請求に関わる問題であることから、当時における変形労働時間制についてその要件を具備していたかどうかについて改めて裁判所の判断を受けることは、今後の労使関係および控訴人の顧客との関係においても適当でないと判断した。

 今後、泊まり勤務および変形労働時間制の運用については、労働時間の適正な管理という立場に立って、労働行政の動向や顧客の理解を踏まえながら、労使で真摯に協議検討することとし、本件については、本日東京高等裁判所において和解によって解決を図ることとした。

 

  この記事で原告側の発言として紹介されているとおり、非常に重大な影響を持つはずのこの判決はいまだほとんど「定着」していないのです。

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