仮眠時間未払い賃金請求−よくある質問と答え

2002年10月    T分会



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1,Q:今年(2002年)2月の最高裁判決とはどんなものなんですか?

  A:1989年に日本生命系列のビル管理会社「大星ビル管理」で働く10人の設備管理労働者が、「泊り勤務の仮眠時間も労働時間だ」、と訴えた裁判での最高裁判決です。高裁への差し戻しという結論なのですが、その骨格は、地裁・高裁と同じく仮眠時間が労働時間であること認めた上で、具体的な支払金額の計算方法については高裁で再審理せよ、というものです。

 仮眠時間が労働時間である理由として以下のような論理を言っています。

@「現実に労務に従事していなくても使用者の指揮監督下にある時間は、それが就業規則等で休憩時間とされていたとしても、労働時間に含まれる。 A使用者の指揮監督下にあるかどうかは、実作業から解放されているかどうか、また労働からの解放がどの程度保証されているか、場所的、時間的にどの程度解放されているか、といった実質から考察すべきだ。 Bビル管労働の仮眠時間の場合、仮眠室待機、警報や電話への応対、外出禁止、等が義務づけられており、労働時間にあたる。

 さらに、労使の労働契約では仮眠時間について時間外勤務手当、深夜就業手当を支払うことを定めていないとしても、仮眠時間が労基法上の労働時間と評価される以上、使用者は労基法13条、37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払う義務がある、といっています。
※13条の主旨:労基法の基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効、無効となった部分は労基法の基準による。
※37条の主旨:時間外労働は25%以上増し、22時〜5時までの労働には25%以上増しの賃金を支払わなくてはならない。→ 22時〜5時の時間外労働なら50%以上増しの賃金支払いとなる。

 一方、警備員などの当直についても同じ主旨の判例が続いていますが、ある警備員の判例では4人チームでの当直勤務について、ローテーションでの仮眠時間帯が仕事から解放されているとして、この場合は労働時間ではなく休憩時間だという判断もされています。 また、会社が作業着を義務づけている場合の着替え時間や点呼時間も労働時間だという判決が最近は続いています。


2,Q:裁判で決まったのなら会社は黙っていても支払ってくれるのではないですか?

  A:残念ながら、そのようなことにはなりません。 当事者が請求しなければならない過去の分だけでなく、これまでの会社の対応を見ていれば、これから先の分についても当事者である私たちが黙っている限り、会社が支払わないのは確実です。 これはすべてのことにいえることですが、法律があっても、それを実現させるためには、実行を迫る当事者の運動が必要です。

 賃金の未払い分の時効は2年なので、2年分の請求をします。(裁判所に未払い割増賃金請求の提訴をする場合には未払い分と同額の付加金の請求もできますが、今回は第一段階として、会社に対し未払いの割増賃金を請求する段階です)。 また、次年度の客先との契約においては、最高裁判例に沿った契約を行なうように、会社に対してのみならず、必要ならば客先に対しても運動を行なっていく決意で臨みたいと思います。


3,Q:こんな請求をしたら会社がつぶれてしまうのではないですか?

  A:そうですね、でもわかりません。会社は組合に対して売上額も何も一切明らかにしたことがないのです。(昨年のある会議では売り上げ○○億○千万円との口頭説明があったようです)。 もしこんな金額の請求をされたらつぶれてしまうというのなら、会社の具体的な経営指標を明らかにすべきです。それを見て私たちが判断します。むしろそうした具体的な会社の経営実態を明らかにさせるためにも今回の請求は必要です。

 実はこれまでも組合は定期昇給見送りやボーナスカットなどの度に、会社の経営実態について明らかにするよう再三求めてきました。しかし、会社は頑として具体的な数値を明かさず、ただ客先の契約額が何割減らされて・・云々、などと繰り返すばかりでした。どこの会社でも合理化案を出すときには、これこれこれだけの赤字、再建の計画はこれこれ、それによってこうしたい、というかたちで説明するのが常識です。形式的には団交に応じるものの、議題についての十分な説明や具体的な資料の提示を拒否し、誠実かつ具体的な説明を行って組合の理解を得ようとする努力が見られない場合、これは「不誠実団交」と呼ばれ、労働組合法第7条第2号(使用者が団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと)に該当する不当労働行為(会社が組合や組合員にやってはいけないこと)にあたります。


4,Q:会社の他の職種の労働者に申し訳ないようにも思うんですが?

  A:清掃など他職種の仲間にも目配りすることはとても大事なことです。実際、清掃などの職種では日給制でぎりぎりの生活しかできない人も多いのです。でも、だからといって、私たちが請求しなければ彼らの賃金が代わりに上がるわけではありません。法的に支払うべきものを堂々と請求したいと思います。ただ、清掃の仲間や私たちを含めたビルメン労働の賃金相場の低さには構造的な問題があります。最大の問題は委託時の競争によって適正な価格が守れないこと、だと思いますが、自治体の委託業務については今年(2002年)3月に地方自治法の規則が変わり、これまで建築工事などだけが対象だった入札の最低価格制度(不良工事を防ぐためにあまりに安い入札は失格とする)等が、清掃やビル管などの役務契約でも可能になりました。また、多くの地域で、最低賃金制とは別に、「生活できる賃金水準」を要求する「リビング・ウェッジ」運動も取り組まれています。ですから、もしこの未払い賃金請求が大きな成果を得たら、そのときはぜひ組合に「多額」の?カンパをして下さい。それが以上のような運動の資金にもなります。


5,Q:会社でこの未払いの対象になる人はどれだけいるのですか?

  A:実は正確にはわからないのです。組合は、会社の全ての現場の所在地や勤務体制などを明らかにするよう要求したことがありますが、その開示を拒否されてしまいました。ただ一般的には、設備で泊まり勤務のあるところ、警備で泊まり勤務のあるところが対象になると思われます。泊まり勤務でも、仮眠時間の設定がない交代制度の所は対象外になると思います。また、今回のように過去にさかのぼっての請求は、請求した人だけを対象に話を進めざるを得ないので、ぜひ、ユニオンに加入して下さい。10月20日の週には集約して要求書にまとめる予定です。
                                                                                                                                     以上

 

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